2015年よりアミューズが行っている、若手人材による世界最大級の国際フォーラム「One Young World Summit(以下、OYW)」へ自社アーティストや社員などを派遣する取り組みが、今年で10回目を迎えました。
そこで今回、社としてこの取り組みを推進してきた代表取締役会長 兼 社長の大里洋吉とOYW参加経験者3名による座談会を実施。アミューズがなぜOYWに参加し続けるのか、OYWへの派遣によってどのような経験が得られ、それが現在にどう活きているのかについて、それぞれの想いや考えをじっくりと語ってもらいました。前編とあわせてご覧ください。
▽アミューズコーポレートレター/世界の若手リーダーが集う舞台へ。アミューズがOne Young Worldに込める想いとは【座談会・前編】
https://www.amuse.co.jp/topics/2025/07/one_young_world_1.html
OYWに参加した経験は、現在の活動にどう活きているのか?
――皆さんは、OYWに参加した経験を現在の仕事や活動にどのように活かしているのでしょうか。
藤﨑:私は仕事で客観視と臨機応変な対応ができるようになったことが、OYW参加後の成長ポイントだと思っています。OYWでは、特にメンタルヘルスに興味を持って講演やワークショップなどに参加したのですが、その中で「悪いところも自分の一部」という印象的な言葉に出会ったんですね。私自身はそれまで、何事もプラスな側面やポジティブなことに、より多くの焦点を当てて取り組む傾向がありましたが、この言葉と出会ってからは、物事の良い側面だけではなく、悪い側面含めて全体を見れるようになったので、たとえアクシデントが起きたとしても、冷静に物事を振り返り、自分の立ち位置を確認しながら改善に向けた行動がとれるようになりました。そんな風に視野が広がったことは、俳優のマネージメント業務にも良い影響を与えてくれているように思います。
市川:僕は世界中の人たちとの出会いが本当に楽しく、それまで知らなかった世界を知ることができて、OYWで人生が変わったと言っても過言ではありません。OYWへの参加をきっかけに、世界で起きている問題やその解決に挑むリーダーの夢や想い、活動内容を多くの方に知ってほしいと思ったことから、1冊の書籍をまとめたんですよ。
大里:立派な本だよね。タイトルは何だっけ?
市川:『WE HAVE A DREAM』です。SNSで掲載希望者を募り、世界のすべての国の若手活動家を紹介することができました。加えて、現在はOYWで得たつながりをもとに、大学や高校でのキャリア教育や、日本から派遣する留学生の事前・事後学習プログラムにも携わっています。具体的には、世界各国の人たちと日本の学生をオンラインでリアルタイムにつなぎ、自分の想いの伝え方やキャリアに対する考え方を学べるよう支援。日本と時差のある国に住むメンバーでも「ぜひ手伝わせて」と言ってくれるので、OYWを通じて本当に素敵な人たちとつながることができたなと感じています。

南光:OYWで出会った人たちはそれぞれ全く異なるテーマを掲げ、問題解決と向き合っていたのですが、どの人もそのテーマにとても熱い想いを持っているのが印象的でした。会話をしていると、高い熱量がダイレクトに伝わってくるんです。そうした想いに刺激を受け、僕も帰国後はNPOを設立。以前から構想していた難病患者とそのケアを担う方々向けの情報提供データベースの構築を本格化させました。また、開催地のベルファストでヤングケアラーの問題に挑む方に大きな影響を受け、自分の介護経験を学校等で伝える講演活動も開始しました。今後の活動のロールモデルとなる人に出会えたのも、僕がOYWで得たもののひとつです。
大里:ここにいる3人を含め、OYWでの経験は、参加者の人生に少なからず役立っているのだろうと考えると、とても価値があるイベントだよね。こうしたイベントを、世界規模で毎年開催している主催者には敬意を表したい。運営は本当に大変だと思うけど、今では、アミューズ社内でOYWのことを知らない人はいないし、OYWに参加した人たちが社内外に少しずつでも良い影響を与えてくれたらと思っているんだよね。
「より良い世界」と平和への貢献を目指して

――皆さんの今後の目標を教えてください。
南光:僕は「日本全国のあらゆる難病患者が生きがいを持って生きるために必要な情報を得られる社会にする」という目標の達成に向けて、現在取り組んでいる活動に引き続き力を注いでいきたいです。また、OYWに参加して視野が広がったことで、自分の活動を世界に展開できる可能性も意識するようになりました。僕が今手がけているソリューションも、もしかしたら、世界各国の難病患者やその家族の役に立てるかもしれません。僕の活動が今後、もしも海を越えて求められる機会があるのなら、ぜひ世界に届けていきたいなと思います。
藤﨑 :私の目標は2つです。1つ目は、アミューズのイメージを「世界とつながりのある会社」というものにアップデートするために、自分自身で積極的に行動できることを引き続き模索していきたいと思っています。2つ目は、OYWも含め、アミューズで得た経験をアーティストマネージメントの仕事に存分に活かしていくことです。アミューズに入社して3年間、本当にたくさんのことを学び、感じ取り、成長することができました。それが叶えられたのも、アミューズが社員に対して様々な選択肢を用意し、私たちを導いて くれたからだと感じています。会社が用意してくれた選択肢で得たものを、今度は私が、担当アーティストに還元する番だと思います。たくさんの選択肢を用意し、アーティストの可能性を広げながら、多くの方に感動を届けられるよう努力し続けたいです。
市川:僕は今後も、日本と世界の距離感をさらに縮めることに貢献したい。これは、2014年に初めてOYWに参加したときから変わらない想いです。世 界と日本をつなげること、世界の様々な国の心理的な距離を近づけることで、より良い世の中が実現できるのではないかと信じているので、今後も様々な取り組みを続けていきたいと思います。

――皆さんの目標を聞いて、大里会長はいかがですか?
大里:介護の問題も、環境保全の問題も、どれも大事な課題だよね。 僕個人としては今、「戦争」が世界で一番大きな問題だと思っているんですよ。今年は終戦80年。この80年の間に、世界各国がお互いを支え合うグローバルな政治・経済環境に入り、国境を越えて結びつきを強めてきました が、それが最近、再び分断されつつあるのを、皆さんも肌で感じているのでは?
市川: そうですね......。OYWでつながった人たちから入ってくる情報は多いです。日々のニュースで目にする世界の問題は、OYWの仲間の誰かが経験している問題で、現実のものなのだと痛感しています。
南光 :戦争や紛争は、人が希望を失ってしまう"理不尽なできごと"のひとつだと思います。僕は人生のテーマとして「たとえ困難下にあっても、誰もが心のきらめきを持って生きられる社会にする」ということを掲げているのですが、この指針を今後、自分にとって最も身近な理不尽だった「介護・福祉」の領域だけでなく、世界平和にも拡張させながら行動につなげていきたいです。
大里 :僕は、「戦争」という行為は止められるものだと思っています。日本に戦火が及ぶ心配をするだけでなく、今この瞬間にも世界各地で起きている戦争を止めるために、僕ら一人ひとりにできることがあるはずです。特に日本は、世界で唯一の被爆国。だからこそ、平和を訴える意味がある。エンターテインメントを生業とするアミューズとして 、音楽や映画、芝居の力を通じて、まずはこの幸せな国に暮らす日本人に平和の尊さを訴えていくべきだし、世界の平和と真剣に向き合い、メッセージを発信できるアーティストが、アミューズからもたくさん出てきてほしい。例えばミュージシャンは、楽曲やコンサートを通じて、ファンにメッセージを直接伝えられるわけです。そうした影響力を持つアーティストの言葉が貧相なものにならないよう、藤﨑さんのようなマネージャーにも、ぜひアーティストを鼓舞していってほしいとも思います。そうやってアミューズで活動するアーティストや社員たちが、OYWへの参加をきっかけに、いろいろな表現方法や活動方法を駆使しながら、世界に平和をもたらすような努力をしていってくれることを切に願っています。
――アミューズがOYWに初参加してから、10年が経ちました。大里会長がこの取り組みにかける想いを、改めてお聞きしたいです。
大里:10年だから、特別な想いを抱いているわけではないかな。前々からOYWに参加者を派遣することは非常に良い取り組みだと思っているので、この先も会社が存続する限り、この活動を続けていってほしいですね。若い人たちにこれからも世界を経験してもらって、会社がさらに豊かになっていけばいいなと思います。
<プロフィール>
■大里洋吉
株式会社アミューズ 代表取締役会長 兼 社長
■藤﨑愉奈
韓国の大学を卒業後、2023年4月に新卒でアミューズに入社。現在は俳優 のマネージメントに携わる。イ ギリス・北アイルランド地方のベ ルファストで開催された、2023年のOYWに参加。
■市川太一
2014年と2015年に学生として 、2016年にアミューズ社員枠で、2021年に招待枠でOYWに参加。培ってきたネットワークを活かし、退社後2019年にWorld Road を設立。企業におけるサステナビリティ活動の支援や教育機関でのキャリア教育などを手がける。
■南光開斗
法政大学現代福祉学部2年生。ALSを患う母親がおり、ヤングケアラーと不登校を経験。「選択肢の情報格差の解消」を掲げ、難病患者・ケアラーへ社会資源や生き方の情報を届けるNPO Inforaを立ち上げる 。こども家庭庁こども家庭審議会委員。2023年のOYWにアミューズ派遣団として一般公募枠で参加。
*社員の所属部署などの情報は2025年6月時点のものになります。