アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。当社は2024年10月に組織改編・会社分割を行い、中核事業であるアーティストマネージメント部門においてカンパニー制を導入し、近年注力してきた事業においては、会社分割を通じて、新設する完全子会社5社と既存の完全子会社のKultureに移管しました。大幅な組織改編から1年が経過した今、分社化した各社へのリレーインタビューを実施。
第1回に登場するのは、株式会社アミューズクリエイティブスタジオのコンテンツ企画製作部にて部長を務める阿南史剛。アーティストマネージメントや海外勤務を経て、現在ではwebtoonやマンガ、アニメなどの知的財産(IP)を活用したビジネス展開を担当しています。そんな阿南に、この1年の取り組みやアミューズグループならではの強み、そして次なる目標について聞きました。
アーティストマネージメントからマンガ・アニメの世界へ
2005年4月にアミューズへ入社し、俳優のマネージャーとしてキャリアをスタートした阿南は、2012年に韓国支社のAmuse Korea Inc.(現AMUSE ENTERTAINMENT INC.)に出向となり韓国へ。CJ ENMのドラマ部門(現スタジオドラゴン)とのドラマファンド設立や、ライブの企画・制作・運営に携わり、海外での経験を積みました。
2015年夏に帰国し、再度マネージャーとして携わった後に、2022年10月からはアミューズクリエイティブスタジオの前身となるコンテンツ開発部でマンガやアニメなどのIP開発に携わることに。「自分がマンガやアニメに関わるとは思っていなかった」と語りますが、マネージャー時代から映画やドラマの企画に挑戦し続けた姿勢が現在の仕事につながったといいます。
阿南「マネージャー時代は自分が他のマネージャーと比較した時に、何かマネージメント以外の強みがほしいと思い、その一つとして映画やドラマの企画を出して常にチャレンジしていました。だからこそ、企画や制作にフィールドが変わるとなってもそこまで違和感はありませんでしたね。」
現在、阿南がメインで担当しているのは電子コミックに注力したIP開発。クリエイターを発掘し、webtoonや通常の横読みマンガをプロデューサー・編集者として企画・制作・出版したり、ドラマやアニメに映像化する際にはプロデューサーも務めます。
阿南「われわれは編集部であると同時に、デジタルパブリッシャーでもあります。電子書店と直接やり取りして販売し、売上を立てる営業の役割も担っています。テレビ局や電子書店、出版社、制作スタジオの共同製作や、IPを作り上げてドラマやアニメへ二次展開できることは、他の企業にはないアミューズグループならではの強みだと思っています」
IPの価値を向上させることで戦うしかない

分社化した当初は数本しかなかったオリジナル作品も、現在では毎月連載が始まるほど多くの作品を配信できるようになりました。HykeComicと共同開発した『夫の家庭を壊すまで』は、松本まりかさん主演でドラマ化され、大きな話題に。
阿南「『夫の家庭を壊すまで』から始まり、『財閥復讐』、『ディアマイベイビー』と、2クール連続で作品がドラマ化されました。そして今年の10月クールからスタートした『ひと夏の共犯者』は、timeleszの橋本将生さん主演で、アミューズからは恒松祐里が出演し、エンディングテーマもカメレオン・ライム・ウーピーパイの「Give in」を起用しています。webtoonや横読みマンガを企画してドラマ化し、その先まで自社で関われることは大きなメリットです。原作、キャスティング、主題歌、挿入歌についても提案できることで、出版だけではない利益が生まれ、IPの価値をさらに向上させ戦っていけるのかなと」
この一年は、手探りながらも作品数を増やし、コンテンツの幅広さを提示したことで、テレビ局や同業他社から声がかかるようになりました。
阿南「現在、MANGAmuseとStellariumというコミックレーベルが2つあります。どんな作品が売れるかわからない状態からスタートしているので、とにかく一周回してみようとさまざまなジャンルを網羅して本数を増やし続けました。チャレンジさせていただいた会社には感謝しています。最初は興味をもってもらえなかったようなところからスタートしているので、 '一緒に仕事をしたい'と言っていただけるようになったのは、大きな成果だと思います」
一方で、アニメ分野も始動。直木賞作家・今村翔吾氏の小説『火喰鳥〜羽州ぼろ鳶組〜』が2026年1月クールから放送開始。また、韓国発のwebtoon『エレキシード(ELECEED)』の放送も決定しています。
阿南「アニメは企画から完成まで時間がかかるので、先にドラマなどの実写作品で実績を重ねてきました。アニメは2026年にようやくスタートラインです」
先輩からの教えとアミューズイズム

現在、コミック企画室(編集部)は3名体制。1人あたり平均10本の作品を抱え、年間20本の新作を目標にしています。営業や納品までプロデューサー、編集者が担うスタイルは業界でも珍しく、他社からも注目されています。
阿南「マネージャー時代に先輩方から教わったことが今の仕事にとても役立っています。アーティストのそばにいて一番理解しているマネージャーがその才能や価値を最大化するために企画から営業、制作となんでもやります。その対象がアーティストから作品に変わっただけなんです。ゼロから立ち上げた編集者が最後まで責任を持つことが、一番説得力があります。自分の仕事を狭めず、どんなことでも抵抗なくできるのは、先輩から引き継いだアミューズのモノづくり精神とマネージャーの経験のおかげです」
最近のwebtoonなどの電子コミックでのヒット作は、不倫や復讐もの、異世界転生もの、西洋ロマンスファンタジーが中心でしたが、市場の成長に伴い、作品の幅は広がっています。
阿南「最初に女性向けのマンガに特化して進めていったのは、深夜ドラマとの相性が抜群に良いからです。他のジャンルだからといってGP帯(19:00〜23:00)や配信ドラマに持っていけるかはわかりません。ただ、これからは売れるものに特化するのではなく、さまざまなジャンルに挑戦し、われわれが作るwebtoonなどの電子コミックも従来のマンガと同じ構造にしていかなきゃいけないと考えています。売れるかはわからなくても、許してもらえる土壌があるならチャレンジしていくべきですし、バランスをとりながら挑戦し続けたいですね。必ずしも全ての作品において映像化を目指すわけではありませんが、自分たちで映像化しなくても、面白い作品だから映像化させてもらえませんか?とわれわれではない誰かに言ってもらえる作品を作るのがゴールだと思っています」
IP開発に向いている人はどんな人かと尋ねると「責任感と愛情を持てる人」だと阿南は強調します。
阿南「責任感=愛情だと思います。親が子を育てるように、作品を育てられる人が向いていると思います。さらに、クリエイターにも愛情を持てる人。相手の気持ちに寄り添える人がいいと思います」
瞬間風速的ではない長く愛される作品を

マネージメントからマンガ・アニメのIP開発という未知のジャンルに飛び込めたのも、チャレンジを許容し受け止めてくれる社風があったからこそだと言います。
阿南「代表の荒木や取締役の山内は、僕らのチャレンジに耳を傾けてくれます。予算規模が大きい案件はもちろん慎重ですが、熱意をもって伝えれば"あとは俺がなんとかする"と背中を押してくれる。本当にありがたいことです。要所要所で取引先へのフォローにも回ってくれるお二人の存在はとても大きいです」
そして阿南がIP開発で大切にしていることは、「関わった人たちがみんなハッピーになる、長く愛される作品を作る」ことです。
阿南「瞬間風速的に見ていただけるものを作るノウハウはわかりましたが、長く愛されるものはまだ作れていません。長く愛されるものを作るには何をすればいいのかが、今後の大きな課題です。バズるのも難しいですが、継続していくのもまた難しいですよね」
アミューズクリエイティブスタジオでは、マンガやアニメの他に、映画や舞台の製作部があり、連携しながらトータルで作品をプロデュースできます。今後の展望として阿南自身も「原作から舞台、映画、ドラマへと展開する内製サイクル」を描いています。
阿南「次のフェーズでは、自社原作から映画、ドラマ、舞台へ展開し、自社内で連携、完結できる体制を作りたいです。さらに、"アミューズクリエイティブスタジオ"という社名そのもののブランドを高め、"この会社の作品だったら見たい"と思ってもらえる存在になりたい。会社の認知とブランド価値が高まれば、スタッフの士気もさらに上がるはず。そこは率先してやっていきたいです」
映画や舞台、コミック、アニメといった多彩なコンテンツを生み出す"スタジオ"のイメージを社名に反映させたというアミューズクリエイティブスタジオ。今後の挑戦にどうぞご期待ください。