アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。今回は、"Kawaiiとメタルの融合"をコンセプトに結成し、グローバルに活躍するメタルダンスユニット「BABYMETAL」の名物プロデューサー&マネージャーKOBAMETALにインタビュー。「BABYMETAL」は今年結成15周年を迎え、5月からは初の欧州アリーナツアー、そして約2万人を動員するロンドン・O2アリーナ単独公演を日本人アーティスト史上初となるSOLD OUTで完遂しました。前編では、KOBAMETALがこれまでアミューズで培ってきたキャリアや、BABYMETAL結成から15年の道のりについて話を聞きました。
音楽以外の経験をしたことで
仕事に自信が持てるようになった
「音楽に携わる仕事をしたい」という想いからアミューズに入社。当時はヴィジュアル系バンドブーム全盛期で、SIAM SHADEやCASCADEといったバンドのメディアプロモーションを担当した後、社内の有志によるインディーズレーベルの立ち上げに参加しました。
KOBAMETAL「当時はインディーズブームでもあったのと、ワタクシはインディーズシーンに詳しかったので社内でレーベルを立ち上げました。ハードコアやパンクといったラウド系のゴリッとしたロックバンドが多かったですね。当時のアミューズはいろいろな部署を経験できる人事システムで、何年かに一度、人事異動があったんです。ワタクシも音楽のマネージメントから社内レーベルを立ち上げて、その後、バラエティ部門に異動しました。タレントや文化人のマネージメントという、音楽とは違った新しい環境を経てからのBABYMETALでした」
さまざまな部署での経験はもちろん今に役立っていますが、自信を持って仕事ができる分野は音楽だとその時間を通じて改めて気づくことができたといいます。
KOBAMETAL「音楽に対しては自分自身の物差しが明確にあるので、軸がブレないんです。軸というのは、自分が好きか嫌いかどうか。エンターテインメントの世界って、結局は好みだと思うんですよね。良い音楽は誰にとっての"良い"なのか。どれが正解ということではなく、アーティストや関わる人たちが"良い"と思っていて、それに応えてくれるオーディエンスがどのぐらいいるかというシンプルな話なんです」
24時間365日を注ぐほど
本気になれるかどうか

KOBAMETALが仕事をする上で大切にしているのは、「24時間365日という時間を注げるほど本気になれるかどうか」ということ。そして、2021年に上梓した著書『鋼鉄っぽいのが好き』(KADOKAWA)で書かれている「自分自身で腑に落ちる感覚以外は気にしない」というスタイルも、仕事をする上では大いに役立っているといいます。
KOBAMETAL「会社や学校は集団行動なので、チームとしての調和を優先する局面はもちろんあります。ただ、自分の時間を費やすなら、自分の中で納得していないとつらくなってしまうなと。疑問が蓄積すると続けていく意味を考え始めてしまう。自分なりに理解して納得して動いているのであれば、大変なことも苦にならないし、乗り越えられると思うんです」
ただ、ビジネスとして関わる以上、実績や結果を出すことにもこだわります。
KOBAMETAL「どうやって結果を出すかは常に考えています。日本の音楽マーケットは独特で、ムーブメントが起こるとそれに追随するアーティストがたくさん出て来て、さらにブームが広がっていく。入社当時に携わっていたSIAM SHADEは、メンバーの皆さんはもともとメタルやハードロックが好きで演奏技術も高いのですが、そのままの形ではヒットにつながりにくかったため、ヴィジュアル系のフィールドに軸足を置きつつ、音楽性は変えずに見せ方を変える売り方をしていたと個人的には感じていました。BABYMETALも、大人数グループが活躍するアイドル戦国時代にワタクシが携わるとしたら......と考えたときに、かつてのヴィジュアル系ブームが頭をよぎり、"アイドルという仮面をかぶったメタルバンドを作ったらどうか"という発想が生まれたんです」
もうひとつ、BABYMETAL結成時にKOBAMETALが思い描いたコンセプトは、「ひとつのミュージカル作品を紡ぐ」ということ。舞台が幕を開け、シーズンごとに作品に関わるキャストやスタッフが入れ替わっていくというイメージを抱きました。
KOBAMETAL「最初は当時のアイドルシーンを見つつ、イベントなどにも出演させていただきながら試運転していました。その結果、握手会やインストアライブといったイベントごとをすべてやろうとすると、アーティスト本人もファンも疲弊すると思ったんです。なので、数で勝負するよりも質を高めていきたいと思い、ライブパフォーマンスに注力して、楽曲や音源などの作品にこだわる方向に傾いていきました」
作品にこだわった結果、国内外で活躍する異色のグループとして成長を遂げたBABYMETAL。サウンド的にも「海外の人が好きそう」とは感じていたものの、ここまで反響が広がるとは思っていませんでした。
KOBAMETAL「大きなきっかけはYouTubeです。まだ始まったばかりのYouTubeは、海のものとも山のものとも言えない、得体の知れない動画サイトだと思われていて、ポジティブに受け入れている人は少なかった。ミュージックビデオをアップロードするのを嫌がるレーベルが多い中、BABYMETALはインディーズでフレキシブルに動けたこともあり、すぐにミュージックビデオを作ってYouTubeにアップし、海外に発信しました。ただ、当時はアーティストとして評価されたのではなく、今で言うTikTokのバズり動画のような反応で、"なんじゃこりゃ!?"という感覚だったと思います」
BABYMETALは一艘の船
時代とタイミングを読んで航海を続ける

そして、2024年、BABYMETALは世界ツアーで101万人動員を達成するなど、数々の偉業を成し遂げてきました。「海外フェスへの出演」「メタルレジェンドに会いに行く」といった、デビュー当時にほのかに思い描いていた夢も叶えています。
KOBAMETAL「会えたらいいなぁくらいの夢だったんですよ。公言してブレずに進んでいたら"言霊"となって夢が叶うこともあるということが、活動をしているうちに分かってきました。夢を思い描くことは誰にでもできますが、実際に行動に移すのは難しい。失敗したらどうしようとか、余計なことを考えてしまうと思うのですが、ワタクシはまったく考えません。まずはアホなふりをしてやってみる。"もしかしたらメタリカに会えるかもしれない"とか、そういうノリでやり続けています(笑)」
これまでの道のりを「ノリ」と謙遜して話しますが、もちろんそれだけではありません。周囲へのヒアリングのほか、最近ではアナリティクスデータを使って細かく分析し、次なる指針を決定しています。
KOBAMETAL「バンドは一艘の船で、ワタクシはその船の船長です。どこに向かって航海するのか、地図を見ながら誘導していく係だと思っています。時代やタイミングを上手くキャッチしながら、"今はこっちに行こう"とか、"まだ行かないほうがいいな"ということを感覚にも頼りつつ、着実に実現するための手順を踏んで船を走らせています。メンバーをはじめ、スタッフもプロフェッショナルな方たちばかりなので、会話を重ねるというよりも、阿吽の呼吸で理解してもらえるところも我々のチームの強みです」
チームとして歩いてきた15年。世界を飛び回って活動する中でも、仕事の仕方はスタート当初から変わっていないと言います。
KOBAMETAL「数年前に中学時代の同級生と久しぶりに会ったときに、ワタクシが当時からメンバーを集めてバンドを組んでイベントをやっていたという話になったんです。同級生の中にはその後、音楽の仕事に就いた人もいて、"コバがいなければ今の仕事をしていなかった"と言ってくれて。自分ではあまり覚えていないのですが、学生時代から同じことをしていたみたいです」
取材時は欧州ツアーを目前に控えていたこともあり、「実際のところ、この15年を振り返る余裕はないんです」とも。
KOBAMETAL「自分のジャッジも含めて、すべてが正解だったかどうかはわかりません。パラレルワールド的な感覚で、選択によって違うストーリーになっていたかもしれないですから。"あの時ああしていたら......"と思うことはたくさんあります。でも、戻ることはできないので、次に何に挑むか、どの道を進むか、未来のことだけを考えています」
2026年までスケジュールが続々と決まっているというBABYMETAL。
後編では、さらなる躍進を目指し、アメリカの活動拠点「BABYMETAL WORLD, LLC」を設立した経緯や、4作目のオリジナルアルバム『METAL FORTH』の魅力について聞きました。
▽アミューズ人/BABYMETALプロデューサー・KOBAMETAL[後編]BABYMETALを媒介とし 人々が世代や国を超えて一つになる「THE ONE」
https://www.amuse.co.jp/topics/2025/08/babymetalkobametalbabymetal_the_one.html