【特別鼎談】地球ゴージャス×アミューズ社長・中西正樹 [前編]

岸谷五朗と寺脇康文、アミューズに所属する2人の俳優による演劇ユニット・地球ゴージャスが2024年に結成30周年を迎え、4月28日より『Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演「儚き光のラプソディ」』を東京、大阪にて上演します。実に6年ぶりの新作となる本公演の開幕に先立ち、当社代表取締役社長である中西正樹が、本番に向けて稽古に励む2人のもとを訪れました。
アミューズも昨年創立45周年を迎え、中西社長も2024年は社長就任から5年、さらには50歳になる節目の年。節目を迎えた3人の特別鼎談の模様を前後編でお届けいたします。

節目を迎えたそれぞれの心境、そして長く続く秘訣とは

中西:僕は1998年にアミューズに入社して26年になるのですが、地球ゴージャスはその4年前からスタートしているんですよね。どうですか、30周年を迎えられた今の心境というのは。

寺脇:"周年"のたびによく聞かれますが、僕らのなかには"節目"って感覚が全くないんですよ。長くやってきたなという感慨も全然なくて。五朗ちゃんがよく「最高作は最新作」って言うんですが、まさに毎作品毎作品、すべてが1作目みたいな気持ちで勝負していたらここまできたっていう。だから、いまだに1年目みたいな気もしていて。

岸谷:節目は周りが作ってくれるもので、我々はそれに乗っかっているだけだから。言葉は悪いかもしれないけど"周年"を利用させてもらっているというか(笑)。「30周年か、すごいことをやりそうだな」って皆さん、期待してくれるでしょ? もちろん期待していただいた以上のものをお返ししなくちゃって毎回思って頑張るわけですけど。

中西:地球ゴージャスは始めた時の初期衝動をずっとそのままに、常に新しい挑戦を盛り込みながら、その輪を大きく強いものにしているイメージがあります。

岸谷:ベテランには全然なってない気がする。少なくとも地球ゴージャスに関してはついこの間、始めたような感覚のままなんだよね。で、気づいたら60歳(笑)。

寺脇:俺なんて62(歳)だよ。たまに"大ベテランの~"とか言ってもらったりするけど、"え、こんな若造なのに?"っていつも思ってる。

岸谷:いまだに始めたばかりの気持ちでいられるというのは、別の言い方をすると、やり残していることがありすぎるからなのかもしれない。演劇の無限性ゆえにまだまだやりたい、やらなきゃいけないって思うことが次々に出てきちゃって。舞台の初日が開いたらもう頭のどこかでは次の作品のことを考え始めていたりもしますから。

寺脇:決まった教科書があるわけではないですし、これが正解なんてものもないですしね、演劇には。俺はよく作品を木に例えるんですけど......舞台を作るって、地球ゴージャスという土壌に毎回、種を蒔いてみんなで育てていくことに似ていて。その木はお客さんに観てもらって初めて成立する存在ですから、舞台が終われば枯れるんですよね。枯れて土に還るんです。するとまた栄養のある土ができて、そこに次の種をゼロから蒔いて育てていく。しかも同じ木はひとつもない。だから、変わらず毎回、新鮮な気持ちでいられるのかな。どんな木になるか自分たちにも予想がつかなくて、ワクワクしながら水をやっている感じ。

中西:僕が入社した当時から「常に新しいことをやって変わり続ける」という精神は、アミューズのずっと変わらないことですね。アーティストの皆さんも、社員も、「お客様のためにもっと良いものを」と常に限界を追求し続けています。そういう純粋さや熱い気持ちが、同じ志を持った仲間を引き寄せて、さらに良いモノづくりをしていくことができる。そんな好循環が、この45年という歴史を生み出しているんだと思います。

「地球ゴージャスの魅力は今この時代に何を訴えるか」
"演劇ユニット"の強みとは

振り返るに地球ゴージャスの誕生は日本の演劇界において実に革新的な出来事でした。たった2人だけの"演劇ユニット"は、当時まだあまり知られていなかった"プロデュース公演(プロデューサーの企画・責任において劇団などにこだわらず参加者を起用して作品を作り、上演する)"というシステムをいち早く取り入れ、話題性の高いキャスティングと、独自の世界観を持ったオリジナル作品を次々に世に送り出し、次第にシーンにおいても存在感を放つようになります。岸谷は地球ゴージャスの成り立ちについて「オリジナルをたくさん作って世に出すため、フットワーク軽く、いつでも演劇ができるようにするために、劇団ではなく "演劇ユニット"にした」と語ります。

岸谷:そうやって、気づくと新しいものに挑戦しているっていうところが地球ゴージャスの強みかもしれない。もちろんブロードウェイ作品や過去の名作を上演することも素晴らしいけど、地球ゴージャスの最大の魅力は"今この時代に何を訴えるか"ってことなんじゃないかと思っていて。

中西:いつも何かしらの風刺が効いていたり、その時に大切なテーマがあったり、地球ゴージャスの演目はいつも時代の写し鏡みたいなところがありますよね。僕もアミューズに入社して現在に至るまでずっと、エンターテインメントとは時代の空気をたくさん吸うことが大衆性に繋がるんだなということを強く感じてきました。僕はそういった思考で活動するサザンオールスターズを長きにわたり担当してきたのですが、地球ゴージャスの舞台を観ていてもそれはいつも思います。「さくらのうた 〜幻の夏...忘れさられた小さな心たちへのレクイエム〜」(2000年)を観た当時の桑田さんも、ものすごく感動したっておっしゃっていましたから。

寺脇:打ち上げにも来ていただいて「悔しいなあ」って言ってくださったのを覚えてますよ。

岸谷:あの時はまさか大将(桑田)が観てくれるとは思いもしなかったな。

寺脇:そこから「クラウディア」(2004年)に繋がっていくんだよね。あの作品は全編、桑田楽曲を使ってますから。

岸谷:俺が企画書を書いて"これがやりたいんです"って桑田さんのところに持って行った時に、中西社長も熱心に話を聞いて協力してくれて。あの時はまだ社長じゃなくて"中西"だった頃だけど(笑)。

中西:僕もあの舞台は、演劇における音楽の重要性というものを改めて教えてもらった、非常に大きな経験でした。

3人の関係性だから言えるこれから先のアミューズ像とは
「いざという時に恐ろしいくらいの力を放つアミューズでいて欲しい」

岸谷:会社が大きくなって、それぞれがそれぞれの場所で頑張っていることがアミューズを大きくしてるわけだけど、いざ「ひとつになろうぜ!」っていう時に恐ろしいくらいの力を放つアミューズでいて欲しい。俺たちがまだ若かった時代ってすぐにひとつになれたじゃない? もちろん今のアミューズは会社としてどんどん良くなっているし、面白い挑戦もいっぱいしていると思うけど。でもそのぶん、各ポジションでやるべきことが広くなりすぎて、ひとつになりにくい時もあるとしたら、アミューズとしてもったいないと思うんだよね!

寺脇:アミューズも僕らが入った頃は社員が20人ぐらいしかいなくて全員が本音で話ができたけど、驚くぐらい組織が広がっている。だからこそ、ここからが社長の手腕になってくると思うんですけど(笑)。

中西:ありがたい話をいただきました(笑)。でもおっしゃる通りなんですよ。アミューズはずっと、「感動だけが、人の心を撃ち抜ける」をスローガンに掲げていますけど、それこそ当時は、五朗さんや寺脇さんが何を考えているか、その息遣いが分かったうえでお客様のことをイメージした感動の話ができていたじゃないですか。でもコロナ禍以降、DX(デジタルトランスフォーメーション)がより求められた状況もあって、もしかすると"感動"という言葉が少し独り歩きしてるところがあるんじゃないかという気が僕もしているんです。最終的に人を感動させるのは、やっぱり人間のイマジネーションでしかないと思うので、もっともっと想像力を結集して繋がれるアミューズにしていきたいです。それこそがアミューズの強みであると思いますので。

この3人だからこそ企業理念の核心にも触れて語り合うことができた鼎談前編。後編では感動体験を創造し続けることの意味や活動を通じて今の時代に届けたいこと、そしていよいよ開幕する地球ゴージャスの最新作「儚き光のラプソディ」の見どころにもフォーカスしていきます。

▽【特別鼎談】地球ゴージャス×アミューズ社長・中西正樹 [後編]
https://www.amuse.co.jp/topics/2024/04/post_249.html

この記事をシェアする

  • Xでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEで送る
abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./abcdefghijklmnopqrstuvwxyzABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ 0123456789>./