【特別鼎談】地球ゴージャス×アミューズ社長・中西正樹 [後編]

 岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット・地球ゴージャスの結成30周年を記念し、当社代表取締役社長 中西正樹が2人のもとに訪れて行った特別鼎談。
後編では、"感動体験を創造し続ける意味"、そして6年ぶりとなる新作公演について語ってもらいました。

▽【特別鼎談】地球ゴージャス×アミューズ社長・中西正樹 [前編]
https://www.amuse.co.jp/topics/2024/04/post_248.html

人生におけるターニングポイントとなった"感動体験"とは

岸谷:人生のターニングポイントでいうと、俺が俳優になったのは、ある日"役者になる"っていう言葉が降ってきたからなんだよね。何か一つ打ち込めるものが欲しいと思って学生の頃はいろんなことをやったけど、わりと器用ですぐに出来るようになるから、すぐに飽きてやめちゃって。でも、就職を目前に自分が突き詰めたい職業ってなんだろうって改めて考えていた時期に「あ、そうだ、俺、役者になるんだった」って。忘れていた言葉を思い出したような感覚でした。今思えば、それは小学生の頃から折に触れて母が観劇に連れて行ってくれていた経験の積み重ねがあって、いわば点が線になって繋がった瞬間だった。なかでも強烈な記憶として残っているのが中学生の時に「ジーザス・クライスト=スーパースター」の初演、東京・中野サンプラザのこけら落とし公演で、当時はまだ気鋭の若手俳優だった市村正親さんや鹿賀丈史さんなど錚々たるキャスト陣が勢揃いした舞台を観て、衝撃と感動を覚えたんだよね。

寺脇:俺は、地球ゴージャスの原型でもある五朗ちゃんと俺が組んだ若手主導の、オフブロードウェイになぞらえた"オフSET"っていう作品を岸谷五朗プロデュースで上演した時でしょうかね。劇団の上の人たちからは「上手くいくわけがない」「SETの看板に傷をつける気か」って散々言われていたんですけど、俺たちもその頃は血気盛んだったので「そしたら辞めます!」とか言って(笑)。でもフタを開けたら大盛況。その初日のカーテンコールで出演者全員が大泣きしちゃってね(笑)。本来ならお客さんの前で涙を見せるなんていけないことなんですけど、あの日の体験は忘れられない。そこで自分の役割が分かったというか、俺たちはこれをやっていくんだなって強く思えたんですよ。

岸谷:演劇が世間に訴える力って微々たるものではあると思うんですよ。でも、俺たちは、どうせ微力なんだからとか、訴えても通じないよとか、そんなことは一切思ってなくて、むしろ俺にとっての「ジーザス・クライスト=スーパースター」みたいに、観てくれた人の心には一生残るくらいのエネルギーがあるし、そうやって一人ひとりの心に残ったものがまた誰かに手渡されて、どんどん大きな力に変わっていくはずだと信じていて。

寺脇:"地球ゴージャス"っていう名前もそういう想いで付けていますから。結成して名前をどうするか考えている時期に阪神・淡路大震災が起こったんですけど......本当にね、演劇がやれることなんて何もないんですよ。例えば料理人なら現地に行って炊き出しができる、大工さんなら家を建てられる、でも役者は何もできない。そんな現実を突きつけられてひどく落ち込んだりもしたんですが、俺たちができることって順番的にはきっと一番後だなと思い直して。着るもの、食べるもの、住むところ、生きるための最低限が揃ったときに絶対、"心の栄養"も必要になるはずだから、その順番がきた時には、どんな時でも"日本のみんな、地球のみんなの心をゴージャスに"しようじゃないかっていう。

中西:本当に素晴らしいです。先ほど(*前編)"地球ゴージャスの演目は時代の写し鏡"と言いましたけど、こうしてお話を伺っているとより実感できますね。アミューズの活動もそうでありたいと思っていて......今でこそSDGsという考え方が身近になってきていますが、一人ひとりの心が少しでも動かなければ、世界が抱える問題の持続可能な問題解決には至らないじゃないですか。逆にわずかでもお客さんの心が動けば大きな力になるという、大切な思想の根幹が演劇や音楽にはある気がするんです。自分自身の体験でいいますと、2011年に開催させていただいた宮城のセキスイハイムスーパーアリーナでの桑田さんの公演(宮城ライブ ~明日へのマーチ!!~)が本当に強く自分の心に刻まれています。東日本大震災から半年、東北の音楽の聖地でもある場所で、病から復帰した桑田さんとお客様の気持ちが一つになって、これまで感じたことのない、とてつもないエネルギーに会場が包まれていた記憶が鮮明に残っています。ずっと涙が止まりませんでした。

岸谷:すごい職業だよね、人の心を動かせるって。特に今の時代はより人々の心を豊かにすることが求められているんじゃないかな。

アーティストとして、エンターテインメント企業として
今社会のためにできることを模索

そうした持続可能な問題解決を目指す活動の一環であり、アミューズにとっても大きな軸となっているのが"Act Against Anything"です。前身となる"Act Against AIDS"は1993年に岸谷、寺脇を発起人として発足し、サザンオールスターズなど当社所属アーティストを中心に音楽コンサートを各地で開催することで当時はまだよく知られていないAIDSという病気についての啓蒙・啓発を推進。2018年にその役目を終えたのち、貧困、難病、教育問題など多くの困難に立ち向かう子ども達の支援を目的として2020年より新たなチャリティプロジェクトとして"Act Against Anything"はスタートを切りました。

2022年に開催したAct Against Anything VOL.2「THE VARIETY 28」の様子

岸谷:エンターテインメントは今、明確に必要だと思う。エンターテインメントだからこそできることがある。"Act Against AIDS"も、今や"Act Against Anything"も、もしも我々が神様から人前で何かをやれる才能をもらえているんだとしたら、その力を全力で使うべきだっていう、その想いでずっと続けているわけで。今はまさに世界中がやらなければならない状況だと思う。エンターテインメントに限らず、だけど。

中西:"Act Against AIDS"も"Act Against Anything"も、五朗さんと寺脇さんが旗を振ってやっていらっしゃいますけど、地球ゴージャスと一本の線でつながっているというか、どちらもごく当たり前にお2人に根づいているものだと感じるんです。アミューズにはそういうマインドがアーティストにも社員にも根付いていて、会社が"AAA"みたいなアクションを起こすことに対して違和感なく受け入れて、参加してくれたりする。能登半島地震に関してもたくさんのアミューズ社員が有志でボランティアに行ってるんですよ。

岸谷:すぐ動くよね、みんな!

中西:そうなんです。アーティストの方々の意識が社員にも自然と伝わっているからなんだろうな、と。そこでさらに思うのは、ボランティアにしてもチャリティにしても継続していくことが大事なんですよね。

岸谷:継続していくことがいちばん難しいよね。1〜2年ならできるんだよ。

寺脇:かといって、やる側に無理が出てくるとまた別の問題になってしまう。僕らがよく言ってるのは、"できることを、できる範囲で、できる時にやってください"ということ。続けなきゃいけないって思いながらやっているとしんどくなるけど、続けたいという想いでやっているから、俺も五朗ちゃんも。

岸谷:まあ、大変じゃないことはないんだけど(笑)。何かの役に立ちたいと思っているアーティストはきっとたくさんいるんですよ。でも、どうすればいいか分からないっていう時に一緒に乗れる船があれば、きっとものすごい力を発揮してくれるはずで。その船を作ることがアミューズの役割なんじゃないかな。"Act Against AIDS"をあれだけ世の中に広めたのってすごいことじゃないですか。結果、ラオスに病院ができたり。そういうアミューズ力ってとても素敵だなと俺は思う。とにかく今はチャリティとしてエンターテインメントがやれること、アーティストができることをやらなきゃいけない。今年もしっかり"Act Against Anything"を動かすつもりでいます。

4月28日よりいよいよ開幕!
Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演「儚き光のラプソディ」

岸谷:俺のなかでは脚本にしても今までの作り方とは違うことをやろうとしているんです。これまでをなぞれば成功にはいちばん近づけると思うんだけど、今回はそのやり方をあえてすべて捨てているので、また違う地球ゴージャスの"色"が生まれることをこの新作で模索している段階ですね、今は。それが上手くいくかどうかは幕が開いてからのお楽しみ(笑)。

寺脇:今までみたいな冒険活劇ではなく、より実世界に近いのかな。設定はもちろんぶっ飛んでいるけど、大人っぽい地球ゴージャスが生まれる予感がしています。ま、2人とも還暦越えてるから大人ではあるんだけど(笑)。ともあれ今回も五朗ちゃんが世界に対して思うことがふんだんに盛り込まれた作品になっています。そのうえで僕らがやりたい芝居というのは観た人が最後に必ず希望の光を持って帰ることができるもの。どんな状況にいる人にもそれぞれに当てはまる光がきっとあるはずだから、それを感じて欲しいですね。

中西:いつも地球ゴージャスの公演は楽しみにしているのですが、お2人の話を聞いて、さらに楽しみになりました。我々スタッフも、想いと心はひとつです。これから先も、一人でも多くの方にみんなで「感動」を届けていきましょう。今日はありがとうございました。

生きてきた場所も時代もまるで異なる人々の出逢いから繰り広げられる物語とは果たして―。地球ゴージャスの新境地を世に問う「儚き光のラプソディ」、東京公演は4月28日から5月26日まで明治座にて、大阪公演は5月31日から6月9日までSkyシアターMBSにて開催します。どうぞご期待ください。

鼎談後に行われた3ショット撮影では「楽しかった」と取材を振り返りながらカメラに向かってこんな笑顔を向けてくれました。

Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演 「儚き光のラプソディ」

ゴージャスチラシ.jpg
作・演出:岸谷五朗

出演:中川大志・風間俊介・鈴木福・三浦涼介・佐奈宏紀・保坂知寿 
原田治・小林由佳・井出恵理子・杉山真梨佳・内木克洋・高木勇次朗・水原ゆき・精進一輝・高島洋樹 
輝生かなで・東川歩未・尾関晃輔・栁原華奈・伊藤彩夏・千葉悠生・権田菜々子・清水錬
岸谷五朗・寺脇康文

特別協賛:大和ハウス工業株式会社
企画・製作:株式会社アミューズ

【東京公演】
公演日:2024年4月28日(日)~5月26日(日)全29公演
会場:明治座
主催:株式会社アミューズ 株式会社明治座

【大阪公演】

公演日:2024年5月31日(金)~6月9日(日)全11公演
会場:SkyシアターMBS
主催:読売テレビ放送株式会社 株式会社キョードーグループ

▽地球ゴージャスオフィシャルサイト

https://www.chikyu-gorgeous.jp/30th

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