アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。今回は、"Kawaiiとメタルの融合"をコンセプトに結成し、グローバルに活躍するメタルダンスユニット「BABYMETAL」のプロデューサーKOBAMETALにインタビュー。後編では、さらに海外を中心とした活動にシフトするべく、アメリカに「BABYMETAL WORLD LLC」を設立した理由や、8月8日リリースの4作目のオリジナルアルバム『METAL FORTH』の魅力について聞きました。
▽アミューズ人/BABYMETALプロデューサー・KOBAMETAL[前編]「BABYMETALは一艘の船で ワタクシはその船長」
https://www.amuse.co.jp/topics/2025/08/babymetalkobametalbabymetal.html
海外での成功は戦略ではなく
ファンの多いところに船を動かしただけ

2010年の結成当初にYouTubeにアップロードした『ド・キ・ド・キ☆モーニング』のミュージックビデオが海外から大きな反響を呼び、2014年には「海外武者修行」と題して活動を海外中心へとシフトしていったBABYMETAL。レディー・ガガのオープニングアクトや名だたる海外の音楽フェスへの出演など、唯一無二の存在として、音楽界に風穴を開けてきました。海外で成功できたのはなぜなのか。戦略について聞くと、意外な答えが返ってきました。
KOBAMETAL「2014年に初めて欧米ツアーを開催したのも、メインマーケットが海外にあると感じたから、そのお客さんがいる方向に船を動かしただけというか、"BABYMETALを支持してくれるファンが多いところに発信する"というシンプルなことだったんです。欧米ツアーから約10年経った今、活動が続いていることが奇跡だと思うくらい、戦略的にどうしようとはあまり考えていませんでした」
戦略的ではなかったというものの、アナリティクスを使ったマーケティングに基づき、時代やタイミングを的確に読み取りながら、BABYMETALという船の船長として舵を取っています。
KOBAMETAL「海外ツアーはマグロ漁船のようなもので、一度港を離れたら2〜3ヶ月帰って来られません。アナリティクスのデータは言わば、魚群探知機。どこの海に行ってどのような魚を釣るか、そのためにはどんなエサをつけたらいいかを示してくれます。Spotify、YouTube、Instagramなどへのアクセスはどこの国の方が多いのか、男女比や使用言語などのデータを他の海外で活躍している日本のアーティストと比較しながら分析しています。ただ、ほとんどの日本のアーティストは、オーディエンスの1位は日本で、全体の4〜5割を占めているんです。それに対してBABYMETALは、オーディエンスの1位がアメリカで、次に日本やメキシコ、ドイツ、ブラジルと続きます。他のアーティストとは明らかに分布が違っていて、メインマーケットはアメリカだということがわかる。BABYMETALの分布と非常に近いのが、マーケットの1位はアメリカで、日本で売れている割合が2割程度のトヨタ自動車です。最近は、データの説明をするときには、"メタル界のトヨタ自動車を目指して頑張ります"と言っているので、いつかコラボできたらいいですね(笑)」
BABYMETALの成功例に続けと、海外を目指すアーティストも多い。マネージメントに関するアドバイスをお願いしたところ、やはりマーケティングが重要だと語ります。
KOBAMETAL「メインターゲットを明確に決めることが大切です。アジアなのかアメリカなのか、南米なのかヨーロッパなのか。具体的にどこの国や地域を目指すのかをまず決めて、そこから、アメリカ在住の欧米人をターゲットにするのか、はたまたアメリカ在住のアジアンアメリカンをターゲットにするのか、具体的に考えて見極めていく。それぞれコミュニティがまったく違うので、アプローチの仕方が変わってくるんです。マグロ漁船の魚群探知機の話に戻りますが、魚によってエサも捕獲するスポットも違いますから。BABYMETALのライブにいらっしゃる多くの方はアメリカ在住の欧米人です。チャンスがあれば、BABYMETALの海外ツアーに来ていただければ、他の日本のアーティストやK-POPの客層と雰囲気が全く違うと感じていただけると思います」
「THE ONE」をテーマに掲げ
世代や国を超えてひとつになる

そして、2025年は4作目のオリジナルアルバム『METAL FORTH』の発売とともに、アメリカに活動拠点となる「BABYMETAL WORLD, LLC」を設立。かつてはビートルズも所属していた「キャピトル・レコード」とグローバルレーベルパートナー契約を結んだことも発表しました。
KOBAMETAL「BABYMETAL WORLD, LLCは、税制など、海外でビジネスをしていくためのハードルをクリアする目的で設立しました。CEOという役割を担っていますが、これも学生時代にバンドを結成してイベントをやっていたノリと根っこの部分は変わっていません。もともとカルフォルニア州にAmuse Group USA, Inc.という子会社があるので、ロサンゼルスにあるキャピトル・レコードの本社との連携が取りやすいだろうという意図もあります」
6月から7月にかけては、4作目のオリジナルアルバム『METAL FORTH』リリースを目前に控えたアメリカツアーを開催。グローバルな活動はさらに加速していきそうです。『METAL FORTH』のタイトルには、4枚目のアルバムであること、映画『スター・ウォーズ』に出てくる「目に見えないエネルギー」、さらに、単語そのものの「その先へ」といった、さまざまな意味が込められています。
KOBAMETAL「2020年の結成10周年でファーストシーズンを終了して、2023年からは新たなメンバーと共に新体制でセカンドシーズンをスタートしています。ファーストシーズンはメタルのレジェンドたちに会いに行く"修行の旅"といったストーリーで、海外も含めて活動してきました。セカンドシーズンでは、BABYMETALが同世代の仲間と共に、メタルの新しいシーンを作り、次の世代を引っ張っていくといったテーマが『METAL FORTH』には込められています。コラボしているアーティストはBABYMETALがワールドツアーを通じてつながった次世代を担うアーティストたちです」
そしてもう一つ、BABYMETALを媒介とし、人々が世代や国を超えてつながってひとつになっていく、「THE ONE」をテーマに掲げています。
KOBAMETAL「今回、アルバムではロシア出身のデスコアバンドSlaughter to Prevailとコラボしていて、6月からのアメリカツアーではウクライナのモダンメタルバンドJINJERとツアーを回ります。ツアーを一緒に回るクルーたちも様々な国々から参加しています。"THE ONE"をキーワードに、BABYMETALを通じて、メタルや音楽を愛する仲間とつながりたい。BABYMETALがみなさんのハブになり、もっともっと世界中へと広がって、輪が大きくなっていくといいなという願いを込めた内容にもなっています」
アミューズは挑戦したいという社員の提案を
受け入れてチャンスをくれる

独特でユニークな活動を続け、今や世界的なアーティストとなったBABYMETAL。KOBAMETAL自身もまた、独自の働き方で道を切り開いてきました。
KOBAMETAL「ワタクシ個人の意見として、マネージメントとは、例えるならば"個人商店"なのではと考えています。アミューズは所属アーティストのキャラクターがかぶっていることがほぼないので、それぞれの個人商店で切り盛りしていく、そこが面白いところだと思います。若手も含めて、挑戦したいという社員の提案を受け入れてくれるチャンスもある。ワタクシが以前立ち上げたレーベルやBABYMETALも、会社から「これをやれ」と言われてやったプロジェクトではありません。自発的に企画書を書いて、やってみたいプロジェクトを立ち上げるチャンスもあるので、最終的にはその人次第だと思います。ただ、やるからにはもちろん責任が伴います。ワタクシの場合は、やりたいことがハッキリと見えていたので、どんな環境や立場で仕事をしていてもブレていなかったと思います。大変なこともありますが、やりたいことがあるなら自発的にチャレンジしていただきたいです」