アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。当社は2024年10月に組織改編・会社分割を行い、中核事業であるアーティストマネージメント部門においてカンパニー制を導入。近年注力してきた事業は会社分割を通じて、新設した完全子会社5社および既存の完全子会社であるKultureへ移管しました。大幅な組織改編から1年が経過した今、分社化した各社へのリレーインタビューを実施。
今回登場するのは、2022年にテクノロジーの力で次世代のエンターテインメント創出を目的に設立された株式会社Kultureの前川 礼と西野 萌(もゆる)。設立から3年、そして、デジタルビジネス事業とEコマース事業をアミューズから承継して1年。現場の最前線でKultureの発展を支えている二人が、立ち上げから今までの道のり、エンタメ×テックの現状、そしてこれからの展望を語ります。
デジタル領域を支える、同年入社の二人

前川も西野も2008年入社組。アミューズに中途入社した前川は、アーティストオンラインショップ「アスマート」をはじめとしたBtoCの自社サービスを担当してきました。2024年10月の組織改編でデジタルビジネス事業およびEコマース事業がKultureに移管され、現在は経営やコーポレート業務を見ながら、引き続きEC領域の業務を先導しています。
前川「いろいろな会社を見てきましたが、アミューズの人と面接したとき、"面白そうな会社だな"と思ったことが入社の決め手でした。アミューズは常に変化があり、挑戦できる会社。だから飽きずにここまで働けています」
一方の西野は新卒で入社し、営業、秘書、広報等を経て、テーマパーク事業の立ち上げに参加。その後、デジタルビジネス事業部に異動しました。
西野「どの業務もやりがいがありましたが、"知らないことに挑戦したい"という気持ちから、デジタルビジネス事業部に移りました。ちょうどコロナ禍に突入したところでしたが、ライブ配信事業など多くのことを経験できました。そこからKultureの立ち上げに参加し、今は採用や広報のほか、複数のプロジェクトに携わっています」
当初代表取締役である白石耕介と西野含め、数人で始まったKultureは、2024年の組織改編を経て約30人規模に拡大しました。
「あったらいいよね」から生まれる新しいサービス
Kulture立ち上げから3年。メールアドレスだけで作成できる、NFTを保有するためのウォレットサービス「A Wallet(エーウォレット)」、ライブのチケットを起点としたファンコミュニティプラットフォーム「KLEW」、そのKLEWを活用した音楽イベント「StoriAA(ストリア)」など、新しいサービスを次々と生み出しています。そんな新しい企画は「ここを越えられたら、アーティストの活動をもっと後押しできるのでは」「こんなサービスがあったらファンの皆さんが喜ぶよね」という視点から生まれると二人は言います。
西野「ファンの方たちやアーティストの課題をどう解決するか。テクノロジーの力を使って乗り越えられる方法はあるのか。誰かに指示されて動くのではなく、チームメンバーが課題やアイデアを出し合い、整理し、現実的に実装できる方法を探していきます」
前川「会議にはエンジニアも参加します。エンジニアも音楽やエンタメが好きで、"どうしたらもっと良くなるのか"を常に一緒に考えていますね。エンジニア視点だけでなく、ファン視点・アーティスト視点で技術を提案してくれるところがKultureらしさです」
2024年にリリースされたコミュニケーション・プラットフォーム「KLEW」は、まさにそうやって生まれたサービスのひとつ。このたび一周年を迎え、アーティストとライブチケットを持つファンだけが参加できる新しいデジタル上の交流の場として、現在37組のアーティストに活用されています。

西野「KLEWはKultureのエンジニアが自社で開発したプロダクトです。ライブのチケット画像を読み込み、AIが解析し、ライブに出演するアーティストと認証されたユーザーだけが特定のチャンネル(チャットルーム)に参加できるというのが大きな特徴で、一連の技術で特許を取得することもできました(*1)」
前川「KLEWのリリースと、連動イベント『StoriAA』のスタートは、Kultureにとって大きな一歩でした。StoriAAは対バン形式の音楽イベントで、さまざまなアーティストに出演いただき、すでに5回を終えました。企画制作、ブッキング、運営、すべてKultureで行っています。KLEWのチャンネルでファンの皆さんがライブの感想を心置きなく話しているのを見たときや、StoriAAの会場で盛り上がる姿を見たときは、本当に嬉しかったです」

「KLEW」をはじめ、ストリーミング配信サービス「LIVESHIP(ライブシップ)」やアーティストオンラインショップ「A!SMART」など、Kultureが運営するサービスは、アミューズ以外の事務所やアーティストにも広く活用されています。
前川「Kultureのミッション"テクノロジーを、エンターテインメントのエンジンに"を実現するためには、アーティストや作品を支えるサービスを考えることが重要です。アミューズグループにいるからこそ、アーティストや作品を間近で感じ、ファン目線だけでなくアーティスト側の視点も理解してサービスを作れることは、Kultureの強みです」
一方、アミューズという大きな母体がありながら、ベンチャー企業のようなスピード感で挑戦を続けられるのはKultureならでは。
西野「昨年は、舞台上をワイヤレスで自由に動き回れるLED装置の開発もありましたし、今年の夏には、BABYMETALの楽曲を題材としたRobloxのオンラインゲームとVRChatのコンテンツをリリースしました(*2)。どれも私たちにとっては新しい挑戦でしたが、まずはやってみる!と、チャレンジできる環境があることに加え、アーティストやマネージメントチーム、パートナーを組む会社の大きな協力もあって実現することができました」

Kultureでは新しい技術に積極的に触れる機会を作るため、社内にフィードバックすることを条件に個人のAIツール導入に補助金を出す「AI補助制度」など、ユニークな取り組みも実施されています。
前川「社員が新しいツールを試して共有することで、情報が社内を循環します。実際に僕も、良いと感じたものは業務に取り入れています。AIやテックをどう生かすか、全員が考えられる体制が整ってきました」
西野「知らないことにも好奇心を持って楽しみたいなと思っています。小さな組織だからこそ、やることが尽きません。探せば探すほど課題が見つかるので、自分にできることだけでなく、足りないことを学びながら仕事に生かしていきたいです」
アーティストとファンのつながりを、より強く

エンタメが好きで、変化に前向きな社員が多いというKulture。どんな人が向いているかを尋ねると、二人は「能動的な人」と口を揃えます。
西野「エンタメが好きなことはもちろん、能動的に自ら変化を楽しめる人、"こうしたらもっと良くなる"と考えられる人は向いていると思います。小さい会社だからこそ、自分の意見が形になるスピードを感じられるはずです」
前川「特にエンジニアは"作ってください"ではなく"一緒に考えて作る"スタンスなので、テクノロジーの可能性を試すことを楽しめる環境です。自分たちの作ったサービスをファンの方々が実際に使ってくれる姿を見るとやっぱり嬉しいですよね。この仕事の一番の魅力は、自分の仕事が直接届いている実感を持てることです」
次のステージとして見据えるのは、これまで培ったノウハウをもとに、より多くのアーティストを支え、ファンとのつながりを強固にする新たな仕組みづくりです。
西野「 "これはKultureにお願いしたい"と思ってもらえるような信頼されるサービスを目指し、社員一丸となって進んでいきたいです。また、デジタルサービスだけでなく、「StoriAA」のようなリアルな場を作ることができるのもKultureの大きな特徴なので、デジタルとリアルの両面からアーティストとファンの接点を生み出し、支えていくことができたらと思います」
前川「テクノロジーもエンタメも常に進化しています。アーティスト自身もどんどん発信できるような環境になってきているので、よりファンの皆さんとのつながりが強くなるようなサービスを提案していけたらいいですね。現状に満足せず、変化を楽しみながら、次の時代のエンターテインメントを支えていきたいです」
「変化を楽しむ」を合言葉に、小さなチームで大きな波を起こすKultureの挑戦は、まだ始まったばかり。新たなデジタル技術とともに、どんなサービスを展開していくのか、今後も目が離せません。
(*1)参考サイトURL
https://note.com/kulture/n/n66108cf27655
(*2)参考サイトURL
https://www.amuse.co.jp/topics/2025/07/babymetal_11.html
*社員の所属部署などの情報は2025年11月時点のものになります。